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スモーリヌイにひるがえるあかはた
スモーリヌイに翻る赤旗
宮本 百合子
「大阪毎日新聞」1931(昭和6)年1月5日~21日号(15日号、19日号を除く)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,354 字 · 51 页
まわりがあまり静かすぎるのと一緒に日本女は気がむしゃついた。
――私どもなら話しますからどうぞ。
――英語は残念ながら私にわかりません。
エレーナ・アレクサンドロヴナは当然の結果としてロシア語で愛想よくいった。
――この「学者の家」へ日本の女のかた、特に作家などを迎えたのはこれがはじめてです。どうぞゆっくりしていらして下さい、室はお気に入りましたか?
――ええ、大層、……ありがとう。
Nはこの主婦にすっかり馴れているらしく、
――実際いい室だ、ここは!
ズンズン窓際へ行って河を眺めた。
――こんなに景色のいい室はそうないんだ。僕んとこから要塞なんか見えない。
――ね、Nさん!
エレーナ・アレクサンドロヴナはNを呼んだ。
――まだ朝飯あがってないんでしょう?
――停車場から真すぐ来たんです。
――我々んところの食堂は十二時でないと開かないんですけれど、お湯は台所にいつでも沸いてますから御自由にお茶あがって下さい。
彼女は、二人の日本女に説明した。
――台所もおつかいになっていいんです、皆さんここでは家のようにやってらっしゃるんですから、室の鍵は、お出かけんなるとき台所にある箱の中へかけておおきんなって下さい。