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『ぐうぞうさいこう』じょげん

ゼエレン・キェルケゴオル

和辻 哲郎

和辻哲郎『ゼエレン・キェルケゴオル』。同一底本的分册已合并为一书。收入:『偶像再興』序言、「自然」を深めよ、ある思想家の手紙、生きること作ること、院展遠望、樹の根、偶像崇拝の心理、自己の肯定と否定と、すべての芽を培え、創作の心理について、停車場で感じたこと、転向、霊的本能主義、エレオノラ・デュウゼ、ベエトォフェンの面、「ゼエレン・キェルケゴオル」序。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,567 字 · 212 页

青空文庫

――そこを自然主義は露骨でもって刺激した。そうしてこの主義がいかにも重大な意義を持っているらしい感じを世人に与えた。実際それは、偽善家の面皮を正直という小刀で剥いでやった、という意味で、重大な意義を持つに違いない。あるいはまた幻影に囚われた理想家を現実に引きもどした、という意味で。――しかしそれは決して以前よりも深い真実を捕えてくれたわけでなかった。それのもたらした新事実をあげれば、まず自然科学の進歩、社会主義の勃興、一般人民の物質的享楽への権利の主張、徹底的な虚無主義の出現――芸術上においては様式の単純化、日常生活の外形的な細部の描写の成功などであるが、そこに著しい進歩があったとは言っても、何もより深いものは実現されていない。

ここに恐らく自然主義の薄弱な反動に過ぎない理由があるのである。十九世紀後半が生んだ偉大なものは、たとえ自然主義のいい影響をうけていたにしても、決して自然主義的な本質を持ってはいなかった。そこには常に自然主義以上のものがあった。この事実は世界の精神潮流から非常に遅れていた最近のわが国の文化についても、厳密に検察せられなくてはならない。