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ディズニーのひととさくひん

ディズニーの人と作品

中谷 宇吉郎

「週刊朝日」1955(昭和30)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,273 字 · 13 页

青空文庫

三 企業家としてのディズニー

通信教育と、徒弟制度とを、巧く近代の経済機構に取りいれた形であって、企業上の一つの発見といっていいであろう。

フォードは、人間を機械の一部として使うという着想をたてて、現代の大量生産工業を樹立した。ディズニーの長編漫画は、芸術の世界にまで、この着想を拡げたものと、見れなくもない。もっとも、従来にも、これと似たようなものがあり、たとえば管絃楽の指揮者などは、類似の性質のものとみてよいであろう。しかし全く同じ絵の描ける画工を、数百人も養成することは、それらとは量的に著しい差がある。量の差も、ある程度以上大きくなると、それは質の差である。

三 企業家としてのディズニー

漫画と限らず、近年の『自然の驚異』や『自然の冒険』のいわゆる記録映画のシリーズでも、まったく同じ傾向が見られる。この場合、役者は自然界の野生の生き物であるから、こっちの註文どおりには、芸をしてくれない。それで無暗と沢山の場面を撮り、その中から、使える場面を拾い出して、それを編集するわけである。カメラマンの忍耐心のほうがより重要で、個性のはいる余地は比較的少ない。

『砂漠は生きている』が、その良い例であって、九巻六千二百フィートのこの長編記録映画も、実は全撮影フィルムから見たら、その五十分の一が使われただけだという。