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ディズニーのひととさくひん
ディズニーの人と作品
中谷 宇吉郎
「週刊朝日」1955(昭和30)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,273 字 · 13 页
幹の途中でちょっと下を見ると、猪はのぼってこられない。それで山猫は得意そうに悠々とてっぺんまでのぼって、やれひと安心という思い入れをする。ところが、その名演技のとたんに、シャボテンの頭が折れて、山猫は猪の群の真ん中に落ちてくる。猪も驚くが、山猫の慌てかたもたいへんである。珍妙無類な恰好で、どぎもをぬかれた猪の群を突っきって逃げて行く。この場面では、満場がどうっとくるのであるが、こういうカットはまったく偶然に撮れるものである。初めから、シャボテンの折れることが、わかっているはずはない。それどころか、山猫がシャボテンに逃げのぼることすら、予期できない事件である。
要するに、偶然を狙うよりないので、無暗とフィルムを走らせることになる。したがって使用量の五十倍ものフィルムが、集積されるわけである。『砂漠は生きている』一本でも、全撮影フィルムをひととおり見るだけで、六十時間近くもかかる。こういう映画が、五、六本くらい平行に製作されつつあるわけであるから、その編集、特殊焼付、録音と考えてみただけでも、並み大抵のことではない。そういう巨大で複雑な企業を、整然と軌道にのせて、それを順調に運行させている。