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トンカトントンカッタカッタ
トンカトントンカッタカッタ
今野 大力
「文芸戦線」1926(大正15)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,217 字 · 3 页
主婦として大切な彼女の右手は何時迄も失われてしまった。
此処暫くは見習として、と与えられたボロ機械にすがっている女がいる。三日経っても四日経っても彼女の縄は買われない。彼女は悲しそうに帳場へ行って何程でもいいから買って呉れられないかと願って見た。然し、
――こんなまむしの様な縄なっていたんでは駄目だ。高い藁使われるばかりも損してる。何だこんなくされ縄。
帳場は親方のお下りゴム長靴で彼女の重ねてあった縄を蹴飛ばした。彼女はその日泣き乍ら子供を背負って雪路を帰って行った。それでも彼女は翌日も矢張隅っこのボロ機械にすがっていた。
帳場は彼女の縄を普通の値段で小売してやったのは翌日である。
カッタカッタカッタ
これは製縄部の片隅にいる五十に近い或はそれ以上とも見える頬のこけた栄養不良の老女工の廻す車の音である。多くの女工のなった縄を仕上げるのが彼女の役である。片手で木製の車を廻し片手で縄を磨き上げる老えた彼女の労働は容易な事ではない。彼女の手はてろてろに磨滅していて皮が破れ血が出ている。
彼女の尋ねて来る五つ位の女の子にせがまれて帯の間から時折一銭位出してやる事がある。