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ドミノのおつげ

ドミノのお告げ

久坂 葉子

「VIKING 17号」1950(昭和25)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,713 字 · 42 页

青空文庫

今はめている指輪、これは十銭で夜店で買ったのよ。魔除けの指輪。もう三十年になるわ」

「おばさまはお偉いわ、どん底でも案外平気でいらっしゃる」

「なるようにしかならないものね」

「私はならせたい。やりたいのよ」

「八卦でもみてもらったらちっとはいい考えが浮ぶかもしれないわね」

「いい考えだわ、そう、雪子みてもらお。母様もみてもらおうじゃありませんか」

「いや、私はいやですよ、私はただ神様におまかせしているのです」

その時始めて口をきいた母はきっぱり斯う云いました。母は神霊教という日本の神道の一派の信者なのです。どんな禍いがあっても神様がおたすけ下すって最少限度で事が済んだと、早速お礼まいりです。狂信的なほどの信仰でした。父も私の家も神霊教ではありません。母一人です。毎月、一日十五日はお祭りがあり、仏壇の隣りの祭壇に榊がのせられ、神主さんがやって来ます。この頃は母以外誰もそのお祭りに加わりませんが、幼い頃は義務のように私達もすわらされました。長い神勅の間、私達兄妹は、畳の目数をかぞえたり、むき出している足をつねり合ったりしてよくしかられたものでした。母の信仰に対して私は何とも思っておりませんでした。