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ドミノのおつげ

ドミノのお告げ

久坂 葉子

「VIKING 17号」1950(昭和25)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,713 字 · 42 页

青空文庫

がすぐに、どうでもいいじゃないか、という気持になって一人自分の部屋へはいって昔の父のことを回想しはじめました。

父は孤独な人でした。人から愛されない人でした。友人を一人も持っておらず、順調に育ったであろう筈の父は、妙に意地けてゆがんだ性質でした。若い頃、マルキシズムにはしったこともあったそうです。そんな父が、たった一つの憩いの場所の家庭において、親しもうとしながら、かえって子供達からはなれられたことは、父の最も不幸なことだったかも知れません。でも、これは子供達の罪ではありません。父の性格と時代のへだたりのせいでした。父は自分から孤独のからの中へはいっておりました。父はまた恋愛などは罪悪のように考えていたようでした。母との結婚は勿論親から決められた平凡な御見合結婚でしたし、私の記憶にある限り、父が女の人の名前すら言ったことはないようでした。私達が、冗談半分に、どこの奥さんが美しいとか、誰の型は好きだとか話しますと、大変嫌な顔をいたしましたし、新聞などの情事事件をあれこれ批評することも、父の前では出来ませんでした。私達子供が成長するにつれ、父との距離はどんどん遠くなって行くのでした。