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ニューフェイス
ニューフェイス
「小説と読物 第三巻第七号」桜菊書院、1948(昭和23)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,479 字 · 25 页
この店へ、毎晩ほとんど九時ごろに必ず現れる三人づれの客があるのです。四十から四十四五の、オーさん、ヤアさん、ツウさんと呼びあっている人品のよい紳士で、一人が商事社の社長、一人が問屋の主人、一人が工場主と表向きは称していますが、実は一人が映画会社の支配人、一人が有名な作曲家、一人がプロジューサーなんですよ」
効果はテキメン、娘の顔がひきしまった。
「この三人は映画音楽演芸界の最高幹部級のパリパリなんですよ。ニューフェース募集と云っても、こんな時あつまるのは大概は落第品で、彼らは常に街頭に隠れた新人を探しているものです。特に唄のうたえるニューフェース、これこそ彼らの熱烈にもとめてやまぬ珍品ですよ。飲食店のたゞの給仕女になるなんて、天分ある御方が、それは全然つまらないことですよ。いかゞですか。ひとつ、何くわぬ顔、この店の給仕女に身をやつして、チャンスを狙っては」
「そうね。それもちょッとしたスキャンダルね。意味なきにしもあらずね。やってみても悪くないと考えるわね」
「えゝ、そう、そう。先方の御三方がよろこびますよ。世に稀なるもの、即ち天才です。実はです。以前にも一人、その狙いで千鳥波の給仕女に身をやつした婦人がありましたです。