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ニューフェイス

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坂口 安吾

「小説と読物 第三巻第七号」桜菊書院、1948(昭和23)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,479 字 · 25 页

青空文庫

「えい、いらッしゃい」

と特別の声でむかえて、女の方へ目顔で知らせる。

「今度きた女中です。ズブの素人で、客扱いには馴れませんから、やることが不作法ですが、ウチのお客さん方はみなさん酒と料理で満足して下さる方ばかりですから、かえって、まア、愛嬌ものかも知れません。ワタシ同様、ゴヒイキにおたのうしやす」

そう紹介してやっているのに、挨拶に近づいてくる風もない。不馴れなのだから、ほったらかしておいてやれ、と千鳥波は気にかけず、

「おい、お銚子。お酒をつけるんだよ」

自分は料理をつくりながら、女の方をチョイ/\見るが、隅の方に思い決したタタズマイで一点を睨んでいるばかり、お銚子に酒をつぐことが念頭にもない様子である。

ハテナ、変ったことが起ったのかな、ふりむいても、客席の方には別状がないから、ウッカリすると、こやつ、テンカンもちの発作を起しやがったんじゃないか、相撲の客席などでも、年に三四度テンカンもちのアブクをふくのにぶつかるものだが、酒興にむくというものじゃない。

「おい、お銚子をつけないか。なにをボンヤリしてるんだ」

とたんに女がキャーッという勢一ぱいの悲鳴をあげた。