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ネオンよこちょうさつじんじけん
ネオン横丁殺人事件
海野 十三
「アサヒグラフ」1931(昭和6)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,095 字 · 26 页
帆村は女の艶かしい肩を叩いた。
すると女は、ますます顔を夜具の中に埋めるようにして全身を戦かせながら、左手をツとあげて、無言のまま表口寄りの隣室を指すのだった。さてはこの隣に、屍体が転っているのであるか。
「おお、これは――」
帆村は、隣室の襖に手をかけたが、これは頑として動かなかった。よくみると、襖は襖だが、特製のもので、こっちからみると紙が貼ってあるが、裏の方は檜材かなにかの堅い板戸になっている。その板戸に内部から錠前がかかっているのだった。なんという厳重なしまりをしてある室なんだろう。
「君、鍵はありませんか」
女は布団に顔を伏せたまま、かぶりを振るばかりだった。帆村は、ジリジリしてくる心をやっと押えつけながら、室のうちを、あちこちと見廻したが、襖がすこし開きかけている押入に気がつくと、急に眼を輝かしたのだった。
それは江戸川乱歩が「屋根裏の散歩者」を書いて以来、開けた自由通路だった。押入の襖を開くと、女給の化粧道具や僅の梱などが抛りこまれてある二重棚の上にとびあがった帆村荘六は、天井板を一枚外して天井裏にもぐりこんだ。それから、厳重なしまりのある隣室と思われる方向へ、腹這いになってすすんでいったが、電線のようなものに、片手を挟まれた拍子に懐中電灯をパタリと落してしまった。