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ハワイのゆき
ハワイの雪
中谷 宇吉郎
「西日本新聞」1955(昭和30)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,073 字 · 2 页
凝結核がないと、水蒸気はくっつく元がないので、水滴にはなれないのである。
事実、この高山の頂上では、湯をわかしても、湯気は立たないそうである。普通鉄瓶の口などから立つ白い湯気は、水蒸気ではなく、非常に小さい水滴の集まりである。水蒸気は透明で眼には見えない気体である。この水蒸気が、大気中の核を中心にして凝縮し、小さい水滴になったものが即ち湯気である。それで凝結核のない空気中では、湯気は出来ない。そしてマウナ・ロアやケアの頂上では、本当に湯気が立たないのである。ところが、この頂上で湯を沸かしながら、その近所で、マッチを一本擦ると、急に白い湯気がもうもうと立つことが、以前から知られている。マッチを擦ったために、凝結核がたくさんできるからである。
不思議なのは、そういう凝結核の無い、あるいは非常に少ないところで、雪が降ることである。雪の中心核は、他から運ばれるとしても、それが普通の雪の結晶に生長するには、たくさんの凝結核が要るらしいことが最近わかってきた。それでこういうところに降る雪は、よほど違った形になるものと予想される。
マウナ・ロアの頂上で一冬越して、雪の顕微鏡写真を撮れば、問題は一ぺんに片付くのであるが、少し道楽気が過ぎるかもしれない。