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「ヒロシマ」と「アダノのかね」について
「ヒロシマ」と「アダノの鐘」について
宮本 百合子
「青年新聞」1949(昭和24)年10月4日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,377 字 · 5 页
そして、一握りの人間が、決して自分の靴の底皮をぬらすことなくともかく生きていなければならない人々の大群を不幸に追いこんでいる現代の戦争というものの本質について深く知っていた。
ハーシーの「アダノの鐘」にもこの感情が主調をなしている。ジョン・ハーシーという人にあらわれているアメリカのプラグマティズムのプラスの面が、この作品に人間らしい生命をふきこんだ。天津に生れ育ったアメリカ人のハーシーが「アダノの鐘」の主人公としてイタリー系のジョボロ少佐をアダノの市に見出していることには意味がある。ハーシーにとって、アメリカが国際的国家であることをよろこび得る理由は「ジョボロ少佐のような人々をもつ」可能があるからである。こんにちの世界で語られている崇高で理想にみちた「プランも希望も、条約も――すべてこういうものは何物をも保証し得ないのである。それを保証し得るものは人間である。いかなる圧迫にも撓まぬ人間の行動であり、わがジョボロ少佐のような人々のみである」と云っている。さて、ジョン・ハーシーは、マーヴィン将軍の専横によってアダノから追放されたのちのジョボロ少佐の生きかたを明日の作品によってどのように追究してゆくだろうか。