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ピストルのつかいかた

ピストルの使い方

泉 鏡花

――(前題――楊弓)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,100 字 · 78 页

青空文庫

いかに私だって気味が悪い。」

「まさか、昼這う奴があるものか。」

と多津吉は投げるように言って再び苦笑した。

「だって、そこが魔ものじゃあなくって?……それに酔ってるんでしょう。ウイで沢山な処へ、だんだんスキッて来てるんですもの。」

「何の事だい、スキッて来るとは。」

「私にも分らない、ほほほ。」

と、片褄を少し崩すと、ちらめく裳、紫の袖は斜になった。

「承れ、いかに近常――と更る処だわね。手拭の床几でさ。東京に美術工業大博覧会がある。外国に対しても晴の仕事じゃから、第一は、お国のため、また県のため、続いては、親仁の名誉のため、心血を灌いだ出品をするように、――大仕事となれば、いずれ費用も掛ろう。手間も要ろう。官より直接とは参らぬが、そこは有志の資本家と内約が結んである。どうじゃ、親仁。お国のため。――はッというので、近常さん、(阿母喜んで下さい。)と、火鉢で茶を入れていたおふくろさんと、課長殿の顔を見て、濃い眉の下に露一杯。

不景気だし、註文は取れず、くらしも、かつかつ。簪は銀の松葉、それはまだ上等よ。煙管は真鍮まで承って、裁縫の指ぬきの、いまも名誉の毛彫の鏨が、針たての穴を敲いていなすったって処だって言いますもの、職人に取っては、城一つ、国一郡、知行されたほどの、その嬉しさ。