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ピストルのつかいかた

ピストルの使い方

泉 鏡花

――(前題――楊弓)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,100 字 · 78 页

青空文庫

時計がさ、御新造さんが、その振袖の時分に、お狂言か何かで、御守殿から頂戴なすッたって、……時間なんか、何時だか、もう分らないんだそうですけれど、打つと、それは何ともいえない、好い音がするんです。一つ残った記念だし、耳の遠い人だけに、迦陵頻伽の歌のように聞きなすったのが、まあ! ないんでしょう。目のせいか、と擦りながら、ドキドキする胸で、棒立ちに、仕事場を出て見なすったそうですがね、……盗まれたに違いない。

――そういえば何だか、黒い影が壁から棚前を伝った気がする、はッ盗まれた、とお思いなさると、上下一度にがッくりと歯が抜けた気と一所に、内がポカンと穴のように見えて、戸障子も、どんでん返し――ばたばたと、何ですかね、台所の板の間を隔ての、一枚破襖に描いた、芭蕉の葉の上に、むかしむかしから留まっていた蝸牛が、ころりと落ちて死んだように見えたんですとさ。……そこが真白な雪になりました……突抜けに格子戸が開いたんです、音も何も聞えやしない。」

「もっともだね、ああ、もっともだとも。」

と呻くように多津吉は応じた。

「葉へも、白く降積ったような芭蕉の中から、頬被をした、おかしな首をぬっと出して、ずかずかと入った男があるんです。