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ピストルのつかいかた
ピストルの使い方
泉 鏡花
――(前題――楊弓)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,100 字 · 78 页
……仕上りと、その出発祝を兼ねた御馳走の席なのよ。
末座で挨拶をして、近常さんは、すぐに毛氈の上をずッと、鶏のわきへ出なさると、運八の次に居た、その富さんが座を立って出て、双方でお辞儀をして、目を見合って、しばらくして、近常さんが二度ばかり黙って頷くと、懐中の鏨を出したんです。
髪の長い、ネクタイの気取ったのが、ずかずかとそこへ出て来て、
――やあ、親仁。――
――これは若旦那様。――
――僕の学校の教授がね、教授、教授がね、親仁の作を見て感心をしていたよ。どこかで何か見たんだって。――
――東京の大先生が、はッ恐れ多い事で。――
――鏨を見せたまえ。――
――いや、くるいが出るとなりません。――
――ふウむ、何かね、鳩の目と、雀の目と、鳩……たとえばだな、鳩の目と、鶏の目と、使う鏨が違うかね。――
――はあ、鈴虫と松虫とでも違いますわ。――
一座が二十六七人、揃って顔を見合わせると、それまで、鼻の隆い、長頤を撫でていた運八が、袴のひだへ手を入れて目礼をしたんですって。
鉄鎚をお持ちの時、手をついていた富棟梁が、つッとあとへ引きました。
その時に近常さんは、羽織の紐を解いて……脱がないで、そして気構えましたッて。