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フェア・プレイのひき

フェア・プレイの悲喜

宮本 百合子

「婦人公論」1939(昭和14)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,290 字 · 3 页

青空文庫

私の不幸というものについて書くように云われると、何となし当惑したような咄嗟の心持になるのは、私ひとりのことだろうか。世間で、不幸という言葉に対して幸福という形容で云われている、そういう生活が決して私の毎日にあるわけではないのだが。それどころか、こうあったらと思う生活とは随分ちがった暮しだと思う。たとえば、誰にしろ、愛している者とは一緒に暮したい。同じ貧乏もするならば二人でしたい、どんな妻だってそう思っているであろう。そんなことも私たちの毎日の実際としては出来にくいことの一つとなっている。又、一人の人間、女として力の一杯が生かされ得る可能において、成長し得る限りの成長をとげて見たいという切実な願望を、私たちは皆それぞれの形でもっていると思う。人間生活の豊富さにふれ、自分の生涯もそのために役立っているという歓びに生きることを希っている。私としてはその一つの道が文学にあるわけだけれども、今日の世界が面している多難さは、私たちの日常生活のごく細かいところまでその波をうたせているから、現実の様々の錯綜した条件から、そのような願望も実現には少なからぬ困難を経ている。