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フシギなおんな

フシギな女

坂口 安吾

「新潮 第四八巻第五号」1951(昭和26)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,406 字 · 35 页

青空文庫

犯罪者は犯罪の現場へ何食わぬ顔で立ち寄りたがるというが、そんな一般的な人間なみなところは感じられないね。そんなところへ立ち寄りたいような子供じみた、オモチャを弄ぶような心理はないらしく見えらア。オスシだって、十のうち一ツのこして平らげているのも大したものだ。非凡というか、むしろ、超凡とでも云うのかね。

小平だって、強姦の現場の近くへ人の近づく声をきくと、慌てて女をしめ殺してしまうような、殺人鬼的とはいえ、とにかく人間らしい怯えはアリアリ分るのだが、この女の神経のふとさは、人間として扱いようがないぐらい、同族の弱さがないようだ。

そうかと云って、小平ほど憎たらしく、イヤらしい気も起らないのは、人間的なところがないせいだろうね。つまり、小平のやったことは、とにかく人間の魂の奥をさがせば覚えのあることだから、憎しみもありうるが、太田嬢は微々たる人間の如きものではないのである。怖るべきメスの怪牛だと思えば、憎むどころか、堂々たる武者ぶりに敬服するね。とても勝てんわ。我らの相手ではない。人間の中でこのお嬢さんと対等につきあえるのは、戦争という怪物だけさ。

とにかく我ら微々たる人間は、微々たる人間同士で交りを結びましょうや。