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フシギなおんな
フシギな女
「新潮 第四八巻第五号」1951(昭和26)年4月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,406 字 · 35 页
科学は素人にはとッつきにくいが、素人にも手がでるのは、まず、この程度のことさ。ところが、それがてんで思い至らなかったのだから、わが身の拙さを甚しく嘆いたのである。
しかし、屋久島にハチマキさせて、あの莫大な雨量をそっくり受けとめるとは考えたもんだね。確実に可能であるし、たしかに莫大な費用を要するとも思われない。ダムというものは垂直のカベで水を遮るものだと考えてハチマキに思い至らなかったところに素人の悲しい盲点があったんだね。
このことは私に大きな教訓を与えてくれましたよ。考え方が、何かに捉らわれていないか。あることを考えるたびに、必ずこう疑ってみる必要があるね。今までも、常に一応疑ることを忘れないツモリであったが、自信がくずれたのさ。もっと突きつめて疑ることが必要だ。
今になって山口の手記を読むと、彼の人柄がかなり分るね。下駄を買ってこようと思って四畳半の襖をあけると、常ちゃんとよぶ声がした、ハッとした足元に血まみれの紀子ちゃんが倒れていた、という件りは彼のウソのうちで最大の傑作だ。これは誰でも思いつけるという凡庸なウソではない。ところが、こうウソをつく以上は先ず医者へ走るとか医者へ電話をかけてから警察へ走るのが自然だろうが、そこまでは計算していない。