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ブイヨン・ドンゾール
ブイヨン・ドンゾール
滝沢 敬一
――十一時の肉の煮出し――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,081 字 · 7 页
次はトルコの番になる。パリ行きオリエント・エキスプレスの寝台券を買い、乗り込もうとする朝、急に高熱が出、目がくらくらして倒れてしまった。病院を探すと米国系と仏国系とがある。もちろんフランスの大学者に敬意を表して、パスツール病院にした。満員で特等室がただ一つ空いているという。なにも英国人と張り合う必要のない国だが、ないものは仕方がない。それでも入院料は、ホテルの半額ときいて安心したものだ。
エジプト滞在中ホテルの食事が悪かったのだろう。腸の自家中毒だそうで、薬も何もすっかりなじみのフランス物だった。イスタンブールの秋は、実によい陽気で、九月一ぱい病室の窓をあけ放したまま寝ていたが、昼夜温度は二十二度に釘付けされ、晴天がつづき、近くはボスフォラス海峡を往来する諸外国の汽船、遠くは対岸アジヤ大陸のスクータリ市を一眸のうちに収められる。私の室は客間に手を入れたもので、中央にあり、広くもあったので、フランス人連中がよく話にやって来た。そのなかの一人は、田舎で腹をこわし、適当な食物が得られず、紅茶で一週間も我慢したそうだった。「茶腹も一時」というが、これではひょろひょろしてころがり込んだわけだ。