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ベルリンだいがく
ベルリン大学
寺田 寅彦
「輻射 第一号」東京帝国大学理学部学生、1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,073 字 · 14 页
鉄道幹線から分れた田舎廻りの支線、いわゆるクラインバーンの汽車の呑気なのに驚いたのはこの時である。東京の市電よりのろいくらいの速度で蛇のようにうねった線路を汽笛の代りにチャン/\/\と絶えずベルを鳴らして進むのである。ポンチ絵のクラインバーンにはきっと豚や家鶏が鉄路の上に遊んでいるように描いてある、その通りである。ゲハイムラート以下皆往復共に四等客車に収まって行った。客車の中は白塗りのがらんどうで、ただ片側の壁に幅の狭い棚のような腰掛があるだけである。乗合わせた農夫農婦などは銘々の大きな荷物に腰かけているからいいが、手ぶらの教授方以下いずれも立ったままでゆられながら、しきりに大気の物理を論じ合っていた。
地理学教室ではペンクや助手のベーアマンが引率して近郊の地質地理見学に出掛けた。ペンクの足の早いのとベーアマンの口の早いのとに悩まされたが、ずいぶん色々とためにはなった。
学生の有志の見学団で毎週のようにいろいろの見学参加募集をする。その広告が大学の玄関に貼り出される。当時は世界第一であったナウエンの無線電信発信所を見物したのもこの見学団の一員としてであった。