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マクシム・ゴーリキイのひとおよびげいじゅつ

マクシム・ゴーリキイの人及び芸術

宮本 百合子

「婦人公論」1933(昭和8)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,075 字 · 30 页

青空文庫

マクシム・ゴーリキイの短い伝記を書くときまった時、私は大変嬉しかった。私はゴーリキイを愛しているし、彼がどんなに熱心に生きたかを簡単ながら大勢の読者と共に語り、数々の教訓を引き出したいと思ったからである。ところが、仕事にとりかかって見ると、ゴーリキイの伝を書くということは案外にむずかしい仕事であることがわかった。それ程、ゴーリキイが今日まで経て来た六十五年の歳月は内容豊富であり、波瀾にとみ、その一つ一つがどれもロシア革命の歴史ときっちり結びついている。一八六〇年代以後のロシア革命史は、何かの形でみんなゴーリキイの生涯の出来事のうちに反映しているのである。

一九二八年、五年ぶりでソヴェト同盟に帰って来るゴーリキイを迎えるために、モスクワもレーニングラードも一種の亢奮で湧き立っている。モスクワの中央図書館では、特別移動的なゴーリキイ展覧会を組織し、ゴーリキイに関するあらゆる資料をあつめ、統計をあつめて大衆に無料公開をしている。労働者クラブの「赤い隅」はゴーリキイの著作と、その工場の労働者がどの作品を一番愛読したかという表などで飾られている。工場の労働通信員たちは、黙ってしかし胸をときめかしている。