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マクシム・ゴーリキイのでんき
マクシム・ゴーリキイの伝記
宮本 百合子
幼年時代・少年時代・青年時代
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,543 字 · 120 页
「アントーヌィッチ、殊に坊主があんたを好きませんや……」
「そりゃあ確かだ」パンコフが裏書きする。
「貴方はあの犬にとっちゃ、喉にひっかかった骨だからね」
「だが俺には友達もある――それが君の友達になるだろう」
ゴーリキイにはロマーシの平静で、単純で、重味のある言葉が気に入った。何故、自殺しようとしたのだ、と訊かないのが、特に愉快だった。ほかの連中ならきっと訊いたであろう。
クラスノヴィードヴォは、高い、峻しい崖の上に、教会の青い屋根が聳え、それからずっと山の端沿いに丈夫そうな小屋が金色に藁屋根を輝やかしている村であった。
真直な大きい鼻のついた紅色の顔に、碧色を帯びた眼が厳格に光っている、背の高い、いかにも美しい一人の漁師が崖下の船着きへ下りて来た。声高く優しく云った。
「よくおいでやした」
このイゾートはロマーシに対して親切に、配慮ぶかく、保護するようにさえ振舞っているのがゴーリキイにわかった。ロマーシは、これらの百姓パンコフや漁師イゾートなどとこの村で「人間に理性をつぎ込む仕事」百姓と小地主とを組織して農業組合をつくり、買占人の手から彼等をきりはなそうと試みているのであった。