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マクシム・ゴーリキイのでんき

マクシム・ゴーリキイの伝記

宮本 百合子

幼年時代・少年時代・青年時代

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,543 字 · 120 页

青空文庫

それぎりであった。村は、自身の犯罪を深く呑みこんだ。

ひと月たたない或る朝、店の倉庫代用につかわれていた納屋から火が出た。そこには、石油、タール、バタ等の商品が入れてあった。ゴーリキイが、火をくぐって納屋へとび込みタールの樽をころがし出し、石油の桶へ手をかけたら――樽の栓はあいていた。そして、地面に石油が流れている。火事は四つの小屋を焼いた。ロマーシとゴーリキイとは百姓達を指揮して消火に奮闘した。ロマーシの命令は「おとなしく聞かれたが、彼等はまるで、他人の仕事をするように、恐る恐る、何だか絶望的に働く」のであった。往還の末に、村長と村の商人を先頭とする金持の塊が認められた。彼等は見物人のように何もせずに立って、手や棒を振りながら叫んでいる。

「火つけだ!」

金持連の中から悪意ある叫びが聞こえた。

商人が云った。

「奴の風呂場に気をつけなけりゃいけねえ」

十軒ほどの家をやいて火事が一応消し止められると、十人ばかりの金持が、二人の百人長にロマーシの手をとらせ、村長を先に立てて、谷の方にあるロマーシの風呂場へ行った。

「風呂場をあけろ!」

「錠をこわせ――鍵はない」