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マクシム・ゴーリキイのでんき

マクシム・ゴーリキイの伝記

宮本 百合子

幼年時代・少年時代・青年時代

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,543 字 · 120 页

青空文庫

その秋、ゴーリキイは、遂に大学のあるカザンへ出発することにしたのであった。

青年時代

――私の大学――

自身の裡に夥しく蓄積され、殆ど彼を圧し潰しそうに感じられる人生からの濃厚な印象、湧き起る様々の疑問は、十五歳のゴーリキイを抑え難い力で、どこかへ、ここニージニでないところへ、もっと広い、もっと息のつけるところへと押し出しつつあったのであるが、その方角をカザン市ときめたのには、彼より四つ年上の中学生エフレイノフの影響があった。

当時、市場の建築工事場の若い事務員をしていたゴーリキイと同じニージニの或る屋根裏部屋を借りてエフレイノフが住んでいた。ゴーリキイの天質と驚くべき読書慾とが、エフレイノフとゴーリキイとを特別の友情で結びつけるに至った。エフレイノフは美しい長髪を振りながら、善良な心に燃えてゴーリキイを説得した。

「君は生れつき科学に奉仕するために作られているんだ。――大学は正に君のような若者を必要としているのだ」

そして、エフレイノフの言葉に従えば、カザンへ行ったらゴーリキイは彼の家で一緒に暮し、秋と冬との間に中学卒業の資格をとって、幾つかの試験を受ける。