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マクシム・ゴーリキイのでんき
マクシム・ゴーリキイの伝記
宮本 百合子
幼年時代・少年時代・青年時代
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,543 字 · 120 页
これは、ゴーリキイが今まで何処でもめぐりあったことのない驚異である。この力がゴーリキイをさし招く。ゴーリキイは、塵芥のいっぱいな崖の上にある小さいデレンコフ食料品店へ出かけてゆく。デレンコフのところには一種の図書館があり、そこには貴重な文献、手書きで写した本などが蒐集されていた。カザン市のあらゆる段階の進歩的見解の持主がこの穢い崖上の一点へ向って出入した。明るい色の髯の中に善良な顔と賢い眼とをもった瘠せた手のアンドレイ・デレンコフは、民衆派で食料品商売から得る僅かの儲けを全部「先ず第一に、民衆の幸福」を信じている人々を扶けるために費している男なのであった。
デレンコフの家で本当の主人はアンドレイではなかった。カザン大学や宗教学校、獣医学校などの学生達及び「未来のロシアについての絶間ない不安の中に生活していた人々の騒がしい集り」であった。この集りの中に「神学校の学生でパンテレイモン・サトウという日本人さえいた」というのは、何と興味ある歴史の一頁であろう!
ゴーリキイに、彼等の論争はよく分らなかった。真理らしいものは言葉の氾濫に溺れて消えた。しかし、生活を良い方へ向けようとしている人々を見、自分もその中に伍しているのだという自覚、何にもまして、彼等が解決しようとしているのが何であるかということは、ゴーリキイ