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マクシム・ゴーリキイのでんき

マクシム・ゴーリキイの伝記

宮本 百合子

幼年時代・少年時代・青年時代

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,543 字 · 120 页

青空文庫

」と。

生活のためパン焼工場へ行った十七、八のゴーリキイが、既に彼等に会わなかった前のゴーリキイではなくなっているという重大な事実、及び暗愚と無恥との中におしこめられて精神的に孤独な境遇に暮すことがゴーリキイにとって、従前とは異った苦痛となっていることなどを不幸にも彼の教師達はちょっとも洞察しなかった。

ロシアの民衆の中に蔵されている健康な人間性、大きい才能の強力な発芽として歴史の上に登場した若いゴーリキイが、計らずも当時の情勢に制約され、苦しんだ内的過程の有様は今日の私達をも様々の示唆によってうつものがある。もし、無智と従属とを意味する名辞として解釈するその時代の習俗に従えば、ゴーリキイは既に盲目な民衆の一員ではなくなっている。さりとて、当時の民衆派たちが、自身を解放の指導者、口火として、外部から民衆に接触して行った、そういう資格において彼を評価しようとすれば、ゴーリキイはそのようなインテリゲンツィアとして、うけいれられない。又、その必要もなかったと思われたであろう。何故なら、彼等ナロードニキの伝統的見解に従えば、ゴーリキイは波止場から来たから、民衆の中からの生粋の子として存在しているところに自然発生的な価うちがあるのであったから。