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マクシム・ゴーリキイのでんき

マクシム・ゴーリキイの伝記

宮本 百合子

幼年時代・少年時代・青年時代

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,543 字 · 120 页

青空文庫

と。

では純粋な工場労働者の生活というものは、この時代に果してどんなであったのだろう。一八八五年に行われたモロゾフ工場のストライキの結果、幼少年者の搾取の制限、婦人の夜業禁止、二週間目毎に賃銀を支払うこと、罰金はこれまでのように二十五パーセントとらず賃銀の五パーセントに止めるというような工場法めいたものがきめられたが、工場監督は工場内の「秩序を保つ」に役に立つ警部であった。マクシム・ゴーリキイがカザンへ出て来た時分、十三ばかりであったシャポワロフは、ペトログラードの鉄道工場で朝七時から夜の十時半まで働いていた。給料は一日三十哥であった。工場の大人共はシャポワロフに「仕事を教えるかわりに、朝から晩までウォツカを買いに走らせた。」皆で出しあって銭が出来ると、怒鳴った。「サーシュカ、半壜買って来い!」何か機会がある毎に皆が酔っぱらった。特に、当時は「どの工場にもある聖者の像の前で礼拝のある日はひどかった。こんな日は礼拝がすむとみんなは気を失うまで酔っぱらう」のであった。

一八七〇年代の高揚は去り、工場の中で「同志」とか「同僚」とか云う言葉はこの時代には個人的な意味しかもたなかった。