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マクシム・ゴーリキイのはってんのとくしつ
マクシム・ゴーリキイの発展の特質
宮本 百合子
「改造」1936(昭和11)年8月臨時特大号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,694 字 · 33 页
荷馬車屋、韃靼人の従卒、軍人とジャム壺をもって歩いてふるまいながらおしゃべりをすることのすきな陽気なその細君などという下宿人の顔ぶれの中で、この「結構さん」は何という変な目立つ存在であったことか。
ゴーリキイはだんだんこの「結構さん」と仲よくなった。ある晩、有名な物語上手である祖母の話を聞いているうちに、この「結構さん」は激しく涙を落しはじめ、興奮して長くしゃべったあげく、いきなり恥かしそうに、そっと部屋を出て行った。人々はきまり悪るげに見交しながら苦笑した。荷馬車屋が、「旦那方はみんなあんな風じゃ。」不機嫌に、毒々しく云い放った。翌日その「結構さん」が祖母の傍へぴったりよって、驚くほどの単純さで「僕は恐ろしいほど一人ぼっちです」と云っているのをゴーリキイは聞いた。その言葉がゴーリキイの幼い心につきささった。家中で、幼いゴーリキイのいうことに耳を傾けてくれるのはこの「結構さん」ばかりであった。祖父はゴーリキイを怒鳴りつけた。
「無駄口しゃべるな。悪魔の水車め!」
だが「結構さん」は、ゴーリキイの話を注意深く聞いてくれるばかりでなく、微笑しながら、しばしば彼に云った。