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マダムさだやっこ
マダム貞奴
長谷川 時雨
「婦人画報」1920(大正9)年2~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,999 字 · 53 页
一本気な持前も、江戸生れの下町のお嬢さんの所有でなければならない。其処へ養母によって仁侠とたんかと、歯切れのよい娑婆っ気を吹き込まれたのだ。そうした彼女は養母の後立てで、十四歳のおりはもう立派な芳町の浜田屋小奴であった。
廿九歳で後家になってから猶更パリパリしていた養母の亀吉は、よき芸妓としての守らねばならぬしきたりを可愛い養娘であるゆえに、小奴に服膺させねばならないと思っていた、その標語――芸妓貞鑑は、みな彼女が実地にあって感じたことであり、また古来の名妓について悟った戒めなのであった。彼女は言う。
「好い芸妓になるなら世話をして下さる方を一人と極めて守らなけりゃいけない。それが芸妓の節操というものだ。金に目がくれて心を売ってはいけない。けれども不粋なことはいけない。芸妓は世間を広く知っていなければいけない。そして華やかな空気にいなければならない。地味な世界は他に沢山ある。遊ばせるという要は窮屈ではいけない。だからお客よりも馬鹿で浮気な方がよい。理につんだ事が好きならば芸妓にはしゃがしてもらいにきはしない。そこで、浮気なのはよいが、慾に迷えば芸妓の估券は下ってしまう。