轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

マダムさだやっこ

マダム貞奴

長谷川 時雨

「婦人画報」1920(大正9)年2~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,999 字 · 53 页

青空文庫

川上は浜田屋へ呼びよせられて来てみると、養母と奴とは冷かな凄い目の色で迎えた。三人が三つ鼎になると奴は不意に、髷の根から黒髪をふっつと断って、

「おっかさんに面目なくって、合す顔がありませんから」

と、ぷいと立って去ってしまった。それにはさすがの策士川上も施す術もなくて、気を呑まれ、唖然としているばかりであったが、訳を聞くまでもない自分におぼえのあること、うなだれているより他はなかった。養母にとりなしを頼もうにも、妻よりも手強い対手なので、なまじな事は言出せなかったのであろう。も一度海外へ出て、苦学をしてのち詫びにくるから、奴は手許へあずかっておいてくれと詫を入れた。けれど亀吉はいっかな聴入れはしない。

「もとの通りにして返したならば受取ろう。」

それが養母の答えであった。川上は是非なく、同郷の誼のある金子堅太郎男爵の許に泣付いていった。何故ならば、金子男が、伊藤総理大臣の秘書官のおり、ある宴席で川上の芝居を見物するように奴にすすめて、口をきわめて川上の快男子であることを説いた。そうした予備知識を持って、はじめて川上を見た奴は、上流貴顕の婦人に招かれても、決して川上が応じてゆかないということなども聴いて、その折は面白半分の興味も手伝ったのであったが、友達芸妓の小照と一緒に川上を招いて饗応したことがある。