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マリア・バシュキルツェフのにっき
マリア・バシュキルツェフの日記
宮本 百合子
「新女苑」1937(昭和12)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,569 字 · 24 页
「生きて、大きな望みを持って、苦しんで、泣いて、もがいて、そうしてついに忘れられてしまう!」この考えは、サロンでの絵の評価がきまらない事の不安と結びついてマリアに「序」をかかせたのであった。
さてマリア・バシュキルツェフの千五百頁にわたる日記は、次の一頁から始められた。
一八七三年
一月(十二歳)――ニイス〔フランス〕プロムナアド・デ・ザングレエ。別荘アッカ・ヴィヴァ。
「叔母ソフィが小ロシアの曲をピアノで弾いているので、それが私に田舎の家を思わせる。」
マリアには、もうよその客間で娘たちを感歎からひざまずかせるような声があった。「衣裳よりほかのことでほめられるのは非常な感動をおこすものである! 私は勝利と感動のために造られている。それ故、私のできることのうちで最上のことは歌う人になることである。もし神様が、私の声を保存し、強め、発達させて下さるならば、私は自分の望む通りの勝利が得られるだろうと思う。」
マリアは、執拗にこの希望を追って、そしたら「私は私の愛する人を自分のものにすることもできるだろう。」と、自分が貴族の娘であることの有利さまで熱心に数えている。