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メメント モリ
メメント モリ
田辺 元
「信濃教育 第八五八号」1958(昭和33)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,397 字 · 19 页
すなわち生きながら死するばかりでは、死につつ生きるといわれるべき理由が認められないわけである。この難点はいかに解決せられるであろうか。
そもそも絶対は絶対無即愛といわれるべきものであるとしても、絶対的なるものは本来相対存在を超越するからには、それが直接に相対者と同一水平面上ではたらき、愛を恵むということはあり得ない。必ずそれには相対者が媒介として介入し、自らはたらきつつ、はたらかされるのでなければならぬ。東西の宗教いずれも中間媒介を絶対と衆生人間とのあいだに介在せしめ、祖師とか預言者とかの役を演ぜしめるのはそのためである。科学の一般的理論は師につかないで独学することも可能であろう。しかし絶対に具体的個別的なる自覚の真実は、出会いに依って結ばれた生ける師弟の間で、実践的に行ぜられた所を師から学びつつ自ら悟ることに依ってのみ、伝えられるのである。生ける個別的人格の交通なくして、絶対的真実は学ぶことも悟ることもできない。従って絶対無即愛も、生ける師の愛を通じて媒介実現せられるのである。しかしてその師の愛を通じて自ら真実を悟得した弟子は、それに感謝する限り、当然に、自ら悟り得た真実を報謝して、更に新しく他人に回施し、彼をして彼自身の真実を自悟せしめるための媒介としなければならぬ。