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メメント モリ

メメント モリ

田辺 元

「信濃教育 第八五八号」1958(昭和33)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,397 字 · 19 页

青空文庫

更にそのイェスの福音を彼自身の十字架上の死とその復活にまで具体化し、主イェス・クリストを神子として神の人間に対する愛の媒介となすに及び、死復活の観念はクリスト教の中心となったわけである。その際復活せるイェスの直接に現れたのが、彼の生前に彼を崇め慕った直弟子や婦人であったという福音書の記事は、さきに述べた如く、生死の主体的交互媒介的自覚に属すること、しかも両者の相入相即の交互的転換に依る自覚が、「生の哲学」を「死の哲学」へ翻転せしめるものであるということを裏書きするものでなくして何であろう。私は「死の哲学」の真実をクリスト教から学ぶこと最も大なるものである。

しかしながら翻って考えると、クリスト教の神は旧約以来の規定に従って本来絶対存在(いわゆる「在りて在るもの」)であって絶対無ではない。もっともクリスト教神学が哲学的に組織せられ、神話的伝説にかわって哲学的弁証がその内容となるに従い、神が絶対有から絶対無に転ぜられる傾向を示したことは争われない。しかし神が絶対無にまで徹底せられたことは極めて稀な場合に限られ、しかもその場合といえども、あからさまにそれを主張することは殆どなかったのである。