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メメント モリ
メメント モリ
田辺 元
「信濃教育 第八五八号」1958(昭和33)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,397 字 · 19 页
しかし神の絶対存在性は絶対無を超え出て有たる生命を保持するが故に、その教の内容はあくまで生の充実有の完遂というものを目標にするのは当然である。神子クリストもその人間性は漸次稀薄にせられて神性を濃厚にせられ、主クリストとしてほとんど神の代理者の地位にまで高められた。しかしそのため、クリストの完全性が神に迫るという問題は、神学の難問たらざるを得なかったわけである。その二律背反は、すでに仏の地位に達する資格を保有しながら、しかも自らその能力を抑え制限して最高点まで登らずにかえって仏より低き地位に止まって衆生に伍し、それにより衆生の済度に任ぜんとする大乗仏教特有の菩薩の在り方と比較するとき、後者の無の立場に反し前者が有の立場たる生の完満に終始することは疑を容れぬと思う。クリスト教の神学が組織せられる際にその機関となったものが、ギリシヤ哲学における生的存在論の完成であったアリストテレス哲学であったということは偶然ではない。クリスト教の、「生の哲学」的傾向は、本来固有であったといってもさしつかえないであろう。
それに比すると菩薩道が、絶対無即愛を徹底的に実現する立場であり、あくまで自己否定を媒介とし自制謙抑を通してのみ、衆生済度の愛に生きんとするものであることは明白である。