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ヤミろんご

ヤミ論語

坂口 安吾

「世界日報 第五五二号~第六九二号」1948(昭和23)年2月23日~7月12日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,308 字 · 36 页

青空文庫

イノチ売りたし、という人が名古屋に現れて流行の兆あらわれ、銀座にも、イノチ売りたしのビラをはった、二十五の元少尉が現れたそうだ。

イノチが本当に買えるわけはないのだけれども、買い手が何人も現れるというから、あさましい。子供たちはクビだのイノチを賭けたがるもので、やい約束だからクビをよこせなど、ケンカに及んでいるものであるが、ちかごろは大人が子供の智慧ぐらいのことを本気でやってる始末である。

八十万円をサギでまきあげた女事務員があれば、十四で十万円をもって逃げた少年もある。

帝銀事件の犯人などはゴマシオ頭のくせに、たった十六万ぬすむのに十二人も殺している。智慧のないこと甚しい。ちかごろ大流行のスリは、たいがい子供の仕業という話であるが、何ヶ月も練習して、十二人も殺してたった十六万ぬすむ、同じぐらいの練習でスリの方がもっと稼ぎがあろうし、後もつゞくというものであるが、子供に及ばぬ智慧のない先生である。

インフレ時代というものは、怠け者とか子供とか、正常では生活能力のない人間が生活力がある仕組で、ちょッと右から左へ物をうごかすと、勤労者の一ヶ月の給料ぐらいが、すぐもうかる。