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ラジオざっかん

ラジオ雑感

寺田 寅彦

「日本放送協会『調査時報』」1933(昭和8)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,067 字 · 11 页

青空文庫

と云って、そうして何故かひどく不機嫌であったそうで、使いの者はほうほうの体で帰って来た。

それからまた元の百貨店へ持って行くと、やがて、完全になったと云って返して来る。やってみると、あいかわらずちっとも聞こえない。

この事柄の理由は明白である。元の機械は相当感度がよかったために、アンテナはわずかに二メートルくらいの線を鴨居の電話線に並行させただけで、地中線も何もなしに十分であったのが、捲線が次第に黴びたり、各部の絶縁が一体に悪くなったりしたために感度が低下し、その上にラジオ商が外見だけは同じで抵抗もインダクタンスもまるでいい加減なコイルを取換えたりしたために、感度は一桁も二桁も下がったと思われる。しかしラジオ商や百貨店ラジオ係が自分の店でそれを試験する場合には、高い長いアンテナを使い、完全なアースを使って試験するのであるから、感度の低い機械でもちゃんと立派に聞こえ、何不足もない機械としか見えないであろう。これは求めるものと与えるものとの意志の疎通せぬためである。此方ではツァイスの顕微鏡を要求しているのに露店で売っている虫眼鏡をよこして「見える」「見える」