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レモンのはなのさくおかへ

レモンの花の咲く丘へ

国枝 史郎

「レモンの花の咲く丘へ」東京堂書店、1910(明治43)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 71,016 字 · 142 页

青空文庫

使女A それなら、どう遊ばすのでござります。

女子 (月を眺め)月の光に照らされて、この室にいつまでもいるつもり。

使女B それでもお殿様やお客様の方々が、お待ちかねでござりますのに。

女子 待つ人の心と、待たるる人の心とが、離ればなれなら致し方がないではないかえ。

使女A 紫の袍を着て、桂の冠をかむり、銀の竪琴を持った方がおいでなされぬ故、そのように申すのでござりましょう。

女子 そうだと云うても、お前方は笑ってくれてはいけぬぞえ。(と面をかくす)

使女B 笑いなどは致しませぬが、使いに参った私どもが、お殿様やお客様へ、何んと御返事を申し上げてよいやらと、それに当惑致します。

女子 いえいえ、少しも云い憎いことはない故に、ありのままを申しておくれ(使女二人は困却せる風にて立ち尽くす。奥にて大勢の笑声。間もなく大勢の足音。――童四人と使女四人とに燭を持たせ、領主及び大勢の騎士、音楽家左の口より出場)

領主 (微酔)使いの者の遅いのは、また嬢が苦情を申して、早速は来ぬのだろうと察した故、我等の方より出て参った。(騎士、音楽家を返り見、女子を指しながら)これ見られい、明日の勝利の贈物は、このように美しい。