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ウィタ・セクスアリス
ヰタ・セクスアリス
「昴」1909(明治42)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,941 字 · 119 页
「を言いんさんな」
「いいや。何でも行きんさったちゅう事じゃ」
こういうような問答をしていると、今一人の男が側から口を出した。
「あそこにゃあ、朝行って見ると、いろいろな物が落ちておるげな」
跡は笑声になった。僕は穢い物に障ったような心持がして、踊を見るのを止めて、内へ帰った。
*
十一になった。
お父様が東京へ連れて出て下すった。お母様は跡に残ってお出なすった。いつも手伝に来る婆あさんが越して来て、一しょにいるのである。少し立てば、跡から行くということであった。多分家屋敷が売れるまで残ってお出なすったのであろう。
旧藩の殿様のお邸が向島にある。お父様はそこのお長屋のあいているのにはいって、婆あさんを一人雇って、御飯を焚かせて暮らしてお出になる。
お父様は毎日出て、晩になってお帰になる。僕の行く学校をも捜して下さるということであった。お父様がお出掛になると、二十ばかりの上さんが勝手口へ来て、前掛を膨らませて帰って行く。これは婆あさんが米を盗んで、娘に持たせて遣るのであった。後にお母様がお出になって、この事が知れて、婆あさんは逐い出された。