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ウィタ・セクスアリス

ヰタ・セクスアリス

森 鴎外

「昴」1909(明治42)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,941 字 · 119 页

青空文庫

僕は余程ぼんやりした小僧であった。

一しょに遊んでくれる子供もない。家職のものの息子で、年が二つばかり下なのがいたが、初て逢った日に、お邸の池の鯉を釣ろうと云ったので、嫌になって一しょに遊ばない事にした。家扶の娘の十二三になるのを頭にして、娘が二三人いたが、僕を見ると遠い処から指ざしなんぞをして、きあって笑ったり何かする。これも嫌な女どもだと思った。

御殿のお次に行って見る。家従というものが二三人控えている。大抵烟草を飲んで雑談をしている。おれがいても、別に邪魔にもしない。そこで色々な事を聞いた。

最も屡ば話の中に出て来るのは吉原という地名と奥山という地名とである。吉原は彼等の常に夢みている天国である。そしてその天国の荘厳が、幾分かお邸の力で保たれているということである。家令はお邸の金を高い利で吉原のものに貸す。その縁故で彼等が行くと、特に優待せられるそうだ。そこで手ん手に吉原へ行った話をする。聞いていても半分は分らない。又半分位分るようであるが、それがちっとも面白くない。中にはこんな事をいう男がある。

「こんだあ、あんたを連れて行って上げうかあ。