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ウィタ・セクスアリス
ヰタ・セクスアリス
「昴」1909(明治42)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,941 字 · 119 页
というようなものが出る。金井君はそれを見て、ついつい嫌になってなんにも書かずにしまった。
そのうち自然主義ということが始まった。金井君はこの流義の作品を見たときは、格別技癢をば感じなかった。その癖面白がることは非常に面白がった。面白がると同時に、金井君は妙な事を考えた。
金井君は自然派の小説を読む度に、その作中の人物が、行住坐臥造次顛沛、何に就けても性欲的写象を伴うのを見て、そして批評が、それを人生を写し得たものとして認めているのを見て、人生は果してそんなものであろうかと思うと同時に、或は自分が人間一般の心理的状態を外れて性欲に冷澹であるのではないか、特に frigiditas とでも名づくべき異常な性癖を持って生れたのではあるまいかと思った。そういう想像は、zola の小説などを読んだ時にも起らぬではなかった。しかしそれは Germinal やなんぞで、労働者の部落の人間が、困厄の極度に達した処を書いてあるとき、或る男女の逢引をしているのを覗きに行く段などを見て、そう思ったのであるが、その時の疑は、なんで作者がそういう処を、わざとらしく書いているだろうというのであって、それが有りそうでない事と思ったのでは無い。