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ウィタ・セクスアリス
ヰタ・セクスアリス
「昴」1909(明治42)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,941 字 · 119 页
「どうしてそんな話を知っている」
「虞初新誌にある」
「妙なものを読んでいるなあ。面白い小僧だ」
こんな風に古賀は面白い小僧だを連発する。柳原を両国の方へ歩いているうちに、古賀は蒲焼の行灯の出ている家の前で足を留めた。
「君は鰻を食うか」
「食う」
古賀は鰻屋へ這入った。大串を誂える。酒が出ると、ひとりで面白そうに飲んでいる。そのうち咽に痰がひっ掛かる。かっと云うと思うと、縁の外の小庭を囲んでいる竹垣を越して、痰が向うの路地に飛ぶ。僕はあっけに取られて見ている。鰻が出る。僕はお父様に連れられて鰻屋へ一度行って、鰻飯を食ったことしか無い。古賀がいくらだけ焼けと金で誂えるのに先ず驚いたのであったが、その食いようを見て更に驚いた。串を抜く。大きな切を箸で折り曲げて一口に頬張る。僕は口には出さないが、面白い奴だと思って見ていたのである。
その日は素直に寄宿舎に帰った。寝るとき、明日の朝は起してくれえ、頼むぞと云って、ぐうぐう寝てしまった。
朝は四時頃から外があかるくなる。僕は六時に起きる。顔を洗って来て本を見ている。七時に賄の拍子木が鳴る。古賀を起す。古賀は眠むそうに目を開く。