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ひとつのめばえ

一つの芽生

宮本 百合子

「新日本」1918(大正7)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,627 字 · 29 页

青空文庫

依然として、肯定と否定が妙な形で、各自の位置を保っている。

そして、道男の熱が下らないこと、私が今年の正月から厄(やく)よけのおまじないだからといって、鱗形のついた襦袢(じゅばん)の袖を着せられていること、父が彼の厄年の年末に、突然最愛の妹を失ったという事実などが、皆一緒になって、恐れている肯定の味方につき、厄年などということに因襲的な、また迷信的な不安を感ずる心を頭から冷笑する心持と、目に見える負け惜しみが、やっきとなって、悲しい考えを揉(も)み消そう揉み消そうと、いきり立っているのを感じたのである。

大人に何か云われた子供が、それはそうだと理窟では知りながら、

「嘘(うそ)だい! 嘘だい!」

「そんなことあるもんか!!」

と泣きながら怒鳴って、地面をドンドン蹴とばしているのを見るような心持がする。

ジイッと心を鎮(しず)めて考えて見なければならないことがありながら、自分でもそれのあることは知りつつ、それに思いきってぶつかってみるだけの勇気がなくて、ワイワイ大きな声や足音ばかりを立てて、はぐらかしているような気がして堪らなかった。

平時は、何とか彼とか思っていても、イザとなると、自分は小人だということがしきりに考えられて、その晩はよく眠られなかった。