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いっぽんのはな
一本の花
宮本 百合子
「改造」1927(昭和2)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,709 字 · 55 页
「そんなこと云っちゃ、何も出来ませんですよ。これだってないより増しなんですから」
と、とり合わなかった。社会事業全般、ないより増しの標準でされているらしかった。
川島が叱られたということ、それも、この働き会の方に関係していた。
W大学へ通いながら、庶務に働いている川島が宿直のとき、小使室で、働き会の小谷という女としゃべっていた。そこへ、諸戸が外から帰ってきて、翌日川島を呼びつけ酷く詰問したのであった。
川島は、小心そうに眉の上に小皺をよせ、
「びっくりしちまった、――とても憤慨して罷めさせそうなことを云うんだもん」
と苦笑した。
「一体何時頃だったの?」
「八時頃ですよ」
伊田が朝子に、
「小谷さんて人、知りませんか」
と訊いた。
「さあ……河合さんなら知ってるけれど」
「ふ、ふ、ふ」
伊田も川島も笑った。
「――色白な人で……幾つ位だい? もうよっぽど年とってるんだろう?」
「三十位なんだろう」
弱気らしく川島が答えた。
「何でもないなあ、解ってるんだけれど……その時だって。話しでもすると思って、いやな気がしたんだろう」
「この頃馬鹿にやかましくなっちゃったね、こないだ矢崎さんもやられたらしいよ」