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いっぽんのはな

一本の花

宮本 百合子

「改造」1927(昭和2)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,709 字 · 55 页

青空文庫

笑われて、伊田は、耳の後をかいた。二日ばかり前、或る対校野球試合が外苑グランドであった。伊田は、午後から帯封書きをすてて出かけて行った。自分にそんな興味も活気もなく、毎日九時から四時までここに坐って日を過す外、暮しようのない矢崎は、それでも他の者がそんなことをすると、甚だ不機嫌になった。彼は、それを根にもって一日でも二日でも、口を利かなかった。

「どの位断って来ました」

朝子が伊田に訊いた。

「今度はそんなに沢山じゃありません。五十位なもんでしょう」

「去年からでは、でも千ばかり減りましたね。……田舎のひとだって、この頃は婦人雑誌どんどんとるんだから、断るのが自然ですよ。比べて見れば、誰だってほかの雑誌がやすくって面白いと思うんだもの」

一円本の話が出て、それに矢崎も加わった。

「娘がやかましく云うんで、小学生全集をとっているんですが、一体あんなものはどの位儲かるもんでしょうな……」

「社でも何か一つとってくれないかな、そうすると僕たち助かっちゃうんだが」

「矢崎さん、いかが? それ位のこと出来ませんか」

「さあ」

伊田が、

「金欠か」

と呟いた。

いきなり朝子が、