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ひとつぶのあわ

一粒の粟

宮本 百合子

「解放」1920(大正9)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,083 字 · 7 页

青空文庫

自分の間抜けに気が付いた太鼓は、暫くぼんやりする程がっかりして恥しがった。けれども、恥しいと云うのが口惜しい太鼓は、すっかりやけに成って、いきなりゴロッと小さい粟粒の上に圧かぶさってしまった。

そして「如何うだ此でもか! ハハハ」

と嬉しそうに笑った。

太鼓は雨が降っても、風が吹いても粟の上にがん張っていた。がその下では粟が、しずかに地面の水気を吸っている。

其から半年程経って、又同じ芝生の上に飛んで来た小鳥は、腐った太鼓を貫いて、一本の青々とした粟の芽が、明るい麗らかな日光に輝きながら楽げに戦いでいるのを見た。

○

魂がおしゃれを止める事は、一刻も早い方がよい。隈のない心が、間違いなくあらゆるもののしんにまで徹して滲み渡れるように、私共は邪念を払って慎しまなければならないのではあるまいか。

どうぞ毎日が、本心で終始されますように――。誰でも本心は授っている。けれども其本心がいつも光っているのは、容易な事ではない。地上には、一日一刻と流転がある。或る問題、或る思想、而して或る亢奮――。自分の生活を純粋なものにしたい望を持って、或る人は、あらゆる今日の問題から、耳をそむけている。