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いちぐう
一隅
宮本 百合子
「作楽」お茶の水附属高女同窓会会報第三十九号、1927(昭和2)年12月7日発行
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,258 字 · 5 页
ひっそり砂利を敷きつめた野天に立つ告知板の黒文字 しらおか 寂しい駅前の光景が柔かく私の心を押した。
「白岡ですよ」
婆さんは袋と洋傘とを今度は一ツずつ左右の手に掴み、周章てて席を出たが、振り返り、
「あの、私の降りるのここでござんしょうか」
「――だって白岡でしょう?」
――何と可笑しく腹立たしい婆さん!
列車は、婆さんが鼠色のコートにくるまって不機嫌で愚かな何かの怪のように更に遠く辿って行くだろう疎林の小径を右に見て走った。
〔一九二七年十二月〕