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おもと

万年青

矢田 津世子

「婦人日本」毎日新聞社、1942(昭和17)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,043 字 · 13 页

青空文庫

福子も、そこへ割りこんだ。嫂たちの何やら真剣な表情が可笑しくってならなかった。

「近いうちね、おばあさまの慰安会をしましょうって、今御相談していたところなのよ。」

上の嫂が教えた。

「各自、持ち寄りの御馳走ではいかが? 時節柄、お重詰めにして、めいめい腕をふるいあったら、おばあさまもお喜びなさってよ。」

二ばん目の嫂は、自信ありげな口調だった。

「福子さんのお料理は、なあに?」

と、いつのまにか仲間入りしていた小姑が訊ねた。

「わたし? わたしは、おでんよ。」

福子がすましてこう言ったので、みんな、どっと笑った。

「わたくしね、普茶料理にしますわ。みなさん、どうぞ、かち合わないようにね。」

三ばん目の嫂が攻勢に出た。

二ばん目の嫂は、ちょっと白けた顔で、

「あら、普茶なの? おばあさま、あまりお好きじゃないと思うけど……」

と、逸らしたふうに言った。

「そう。お世話さま。おばあさまね、いつだったか、とてもお気に召しましてね。」

三ばん目の嫂は、にこやかな顔で応酬した。

「おばあさまも、この頃は、お好みが変りましてね。純粋のお懐石でないとお口にあいませんのよ。」