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さんりょうせいべえとめいばあさづき

三両清兵衛と名馬朝月

安藤 盛

「少年倶楽部」講談社、1931(昭和6)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,144 字 · 17 页

青空文庫

そして、自分のすむ家は、屋根がやぶれて雨もりがするので、新築のうまやのすみに、三畳敷きばかりの部屋を作らせて、

「朝月、今日から貴様のところへやっかいになるぞ、よろしくたのむて」

と、ふとんも机も、鎧びつまでもここへもちこんできて、馬糞の臭いのプンプンする中に、平気で毎日毎日寝起きしていた。

「三両清兵衛は、馬のいそうろうになったぞ」

友人たちは笑った。清兵衛はあいかわらず平気なもの。

「朝月。いまに貴様とふたりで、笑ったやつを笑いかえしてやる働きをしてやろうな。そのときにはたのむぞ」

「ウマクやりますとも、ひ、ひん!」

まさかそんなことはいわなかったが、清兵衛のことばがわかったと見えて、朝月は首をたれた。清兵衛は一生懸命になって、朝月を養ったので、その翌年には見ちがえるような駿馬になった。

「おや、おや、あのばけもの馬がりっぱな馬になったぞ」

「さすがに清兵衛は馬を見る目がある。あのやせ馬があんなすばらしいものになろうとは、思えなかった」

「いや、あれほど心を入れて飼えば、駄馬でも名馬にならずにはいまい」

昨日まで笑っていた友だちは、朝月の駿馬ぶりを見て、心からかんぷくしてしまったのであった。