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さんじゅうねんごのせかい
三十年後の世界
海野 十三
「少年読売」1948(昭和23)年3~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,140 字 · 137 页
空気服は特製の人造ゴムまたは軽硬金属板で出来ていて、外界と服の中とは、完全に気密――つまり空気が逃げる穴や隙間がない。
それからこの空気服は、かなりの圧力にたえるように、しっかりした材料で作られている。
空気服の特長は、もっとある。月世界は非常に寒い。そこで空気服の中は、いつも摂氏十八度に温められてある。
まだ仕掛がある。空気のない月世界などでは、音を出すことができない。音は空気の波であるから、空気がなければ音は出ないわけだ。そうすると、人と人とは、声で話をすることができない。しかしおたがいに思うことを、相手に通ずることができないと困る。そこで空気服の附属品として無線電話機がとりつけてある。くわしくいうと極超短波を使う無線電話機で、耳のところに小型の高声器があり、のどの両脇にマイクロホンがあたっていて、空気服を着ている人は空気服の中で普通にしゃべれば、それがマイクロホンと器械を通じて電波となり、他の人々の器械に感じ、耳のそばの高声器から、ことばとして聞えるのであった。
空気服には、この外に、かんたんな食事をとり、また水や牛乳やレモン水などをのむ仕掛が、かぶとの内側にとりつけてあり、その外いろいろおもしろい仕掛もあるが、くわしく話しているときりがないから、このへんにしておこう。