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さんじゅうねんごのせかい
三十年後の世界
海野 十三
「少年読売」1948(昭和23)年3~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,140 字 · 137 页
「正吉までに会おうとは思わなかった。正吉をよく世話して下されて、お礼のことばもないですわい」
モウリ博士は、正吉の顔を穴のあくほど見つめる。そうでもあろう。正吉を冷蔵球の中に入れで日本アルプスの山中においたまま、約束の二十年後にその球を開いてやることも出来ず、今までそのままにしておいたのであるから、ここで正吉に会って博士がびっくりするのも無理ではない。
「正吉君との間には、積もる話があるでしょう。まあ、ゆっくりお話なさい」
と、隊長はいった。
「いや、話は山ほどあるが、そんなことをしていられないのじゃ」
「と、おっしゃると何か――」
「重大事があるから、わしは危険をもかえりみず、老衰した身体にむちうって駆けつけてきたのですわい。そのことだ、そのことだ。マルモ君早くこの土地をはなれないと、月人の大集団が、この宇宙艇を襲撃して、全員みな殺しになるよ」
「それはどうして――」
「分っているじゃないか。月人たちはトロイ谷のことをたいへん恨みに思っている」
「いつ来襲するのでしょうか、月人たちは」
「今、さかんに武器や空気服をそろえにかかっている。あと二、三時間たてば、かならずここに押しかけてくるだろう」